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大阪地方裁判所 昭和54年(ワ)1869号 判決 1988年7月18日

原告 甲野花子訴訟承継人 甲野一郎

<ほか四名>

右五名訴訟代理人弁護士 川原俊明

被告 甲野夏子

<ほか一名>

右両名訴訟代理人弁護士 町彰義

西口徹

右町彰義訴訟復代理人弁護士 村辻義信

被告 丙川秋夫

右訴訟代理人弁護士 坂本義典

主文

一  原告らの請求をいずれも棄却する。

二  訴訟費用は原告らの負担とする。

事実

第一当事者の求めた裁判

一  請求の趣旨

1  被告甲野夏子は、原告らに対し、別紙物件目録記載(一)の土地につき、真正な登記名義回復を原因として、各持分六分の一の移転登記手続をせよ。

2  同被告は、同目録記載(二)(三)の各土地及び(四)の建物につき、いずれも真正な登記名義回復を原因として、原告甲野一郎、同乙山春子、同甲野二郎及び同甲野秋子に対し、各持分一二分の一の、同甲野三郎に対し持分一二分の七の移転登記手続をせよ。

3  同被告と原告甲野二郎との間において、同目録記載(五)ないし(七)の各建物が同原告の所有に属することを確認する。

4  被告丙川秋夫は、同目録記載(八)の土地につき、いずれも真正な登記名義回復を原因として、原告甲野一郎、同乙山春子、同甲野二郎及び同甲野秋子に対し各持分一二分の一、同甲野三郎に対し持分一二分の七の移転登記手続をせよ。

5  被告甲野春夫は、原告らに対し、同目録記載(九)の建物を明け渡せ。

6  訴訟費用は被告らの負担とする。

7  5項につき仮執行宣言

二  請求の趣旨に対する被告らの答弁

注文と同旨

第二当事者の主張

一  請求原因

1  訴外甲野太郎(以下、「太郎」という。)は、別紙物件目録記載の各不動産(以下、番号に従って「本件(一)の土地」、「本件(四)の建物」などという。)を所有していたが、昭和三九年六月四日死亡した。

2  太郎の法定相続人は、妻甲野花子(以下、「花子」という。)、その間の二女被告甲野夏子(以下、「被告夏子」という。)、二男原告甲野一郎(以下、「原告一郎」という。)、四女原告乙山春子(以下、「原告春子」という。)、三男原告甲野二郎(以下、「原告二郎」という。)、五男原告甲野三郎(以下、「原告三郎」という。)、三女原告甲野秋子「以下、「原告秋子」という。)であり、被告甲野春夫(以下、「被告春夫」という。)は、被告夏子の夫である。

3  太郎は、昭和三九年四月六日、別紙「遺言證」記載のとおり、本件(一)の土地を花子に、本件(二)、(三)、(八)の各土地及び(四)、(九)の各建物を花子及び原告三郎に持分各二分の一の割合で、本件(五)ないし(七)の各建物を原告二郎に、それぞれ遺贈する旨の同日付自筆証書(以下、「本件遺言書」という。)による遺言(以下、「本件遺言」という。)をした。

4  花子は、本訴訟の係属中である昭和六〇年六月一〇日死亡し、その子である原告ら五名及び被告夏子がこれを各六分の一の割合で相続した。

5  右8の遺贈及び4の相続により、本件(一)の土地については原告らが各六分の一の割合で、本件(二)、(三)、(八)の各土地及び(四)、(九)の各建物については原告三郎が一二分の七、その余の原告らが各一二分の一の割合で、本件(五)ないし(七)の各建物については原告二郎が、それぞれ共有持分権及び所有権を取得した。

6  ところが、

(一) 本件(一)の土地については、大阪法務局守口出張所昭和四八年九月一八日付第二五九四一号をもって、本件(二)の土地については、同出張所同年一二月四日受付第三二九二三号をもって、本件(三)の土地については、同出張所同年一〇月八日受付第二七七七三号をもって、いずれも昭和三九年六月四日相続を原因とする被告夏子のための所有権移転登記が経由されている。

(二) 本件(四)の建物については、右同出張所昭和五一年一二月二〇日受付第二六七〇二号をもって同被告のための所有権保存登記が経由されている。

(三) 被告夏子は、本件(五)ないし(七)の建物につき原告二郎の所有権を争っている。

(四) 本件(八)の土地については、大阪法務局昭和五一年八月一八日受付第二〇八九五号をもって昭和三九年六月四日相続を原因とする被告夏子のための所有権移転登記が、更に、同法務局昭和五一年九月二一日受付第二三八三九号をもって同日売買を原因とする被告丙川秋夫(以下、「被告丙川」という。)のための所有権移転登記が各経由されている。

(五) 被告甲野春男は、本件(九)の建物を占有している。

7  よって、原告らは、被告夏子に対し、本件(一)ないし(三)の各土地及び(四)の建物の各共有持分権に基づいて、請求の趣旨1、2記載のとおりの持分移転登記手続を、被告丙川に対し、本件(八)の土地の各共有持分権に基づいて、請求の趣旨4記載のとおりの持分移転登記手続を、被告春夫に対し、本件(九)の建物の各共有持分権に基づいて同建物を明け渡すことを、原告二郎は、被告夏子との間で、本件(五)ないし(七)の各建物が同原告の所有に属することの確認をそれぞれ求める(なお、以上の各請求は、本件遺言及び花子の相続により原告らが取得した共有持分権に基づくものであって、太郎及び花子の死亡による相続によって取得した共有持分権に基づくものではない。)。

二  請求原因に対する認否

1  被告夏子、同春夫

(一) 請求原因1、2の事実は認める。

(二) 同3の事実は否認する。本件遺言書は、太郎の自筆によるものではないから、本件遺言は無効である。また、本件遺言が有効であるとしても、その趣旨は、太郎の相続財産のうちの一部の不動産について、相続人間の遺産分割方法を指定したものであって、原告ら主張のような遺贈の意思を表示したものではない。

(三) 同4の事実は認める。

(四) 同5の主張は争う。

(五) 同6の(一)ないし(三)の事実は認める。

(六) 同6の(五)の事実は否認する。被告夏子は、太郎の生前から同人との間の使用貸借契約に基づいて、本件(九)の建物内に同被告の内職の材料等を置き、同建物をその保管場所として使用している。同被告の夫被告春夫は、同建物を占有していない。

2  被告丙川

(一) 請求原因1の事実中、太郎が本件(八)の土地を所有していたが原告ら主張の日に死亡したことは認める。

(二) 同2の事実は認める。

(三) 同3の事実は否認する。本件遺言書は、太郎の自筆によるものではないから、本件遺言は無効である。また、本件遺言が有効であるとしても、その趣旨は、太郎の相続財産のうちの一部の不動産について、相続人間の遺産分割方法を指定したものであって、原告ら主張のような遺贈の意思を表示したものではない。

(四) 同4の事実は認める。

(五) 同5の主張は争う。

(六) 同6の(四)の事実は認める。

三  被告らの抗弁

1  原告二郎、同三郎及び花子は、本件遺言書の存在を知りながらこれを隠匿した。したがって、右原告ら及び花子は太郎からの遺贈を受けることができない。

2  太郎は、昭和三六年一二月四日、本件(一)ないし(三)の各土地及び(四)の建物を被告夏子に贈与した。したがって、本件遺言は、これらの土地建物については効力を生じない。

3  原告ら、被告夏子及び花子との間で、昭和三九年九月ころ又は昭和四八年九月ころ、本件(一)ないし(三)及び(八)の各土地及び(四)の建物の所有権を同被告が取得する旨の遺産分割の協議が成立した。

4  原告ら、被告夏子及び花子は、太郎死亡後、同人の遺産の一部について、本件遺言書の内容と異なる遺産分割協議をし、これに基づいて右遺産の一部を他に処分した。例えば、

(一) 本件遺言書によれば原告一郎が相続すべきものとされている別紙相続財産目録35の宅地を、相続人間の協議に基づき、昭和四二年二月九日、訴外丁原冬夫に売却し、代金六〇万円を花子と被告夏子で分配した。

(二) 本件遺言書によれば花子と原告三郎の共有にすべきものとされている大阪市都島区《番地省略》の土地建物を、昭和四五年一月、原告二郎の所有にした。

(三) 本件遺言書によれば原告秋子が相続すべきものとされている別紙追加相続財産目録1の建物を、協議に基づいて、昭和五一年七月一二日、訴外戊田冬子に売却した。

かような経過からすれば、本件遺言は、もはやその効力を失ったというべきであり、仮にそうでないとしても、原告らが、本件遺言の内容に反する処分をしながら、その一〇数年経過後に本件遺言に基づいて本件(一)ないし(九)の土地建物についてその所有権を主張するのは、信義則に反し、原告らの本件請求は権利の濫用である。

5  仮に、右1ないし4の各主張に理由がないとしても、本件遺言に基づく原告一郎、同三郎及び花子に対する遺贈は、被告夏子の遺留分を侵害するから、同被告は、右原告ら及び花子に対し、右侵害の限度において右遺贈を減殺する旨の意思表示をした。すなわち、

(一) 被告夏子の遺留分割合は一八分の一であり、その算定の基礎となる財産とその評価額は、別紙相続財産目録(本件(一)ないし(九)の土地建物を含む。)及び追加相続財産目録記載のとおりである(なお、右評価額は、大阪府下所在物件については昭和五八年度路線価設定地図により、熊本県所在物件については同年度固定資産税の評価額を五倍した額を時価と推定して算定した。)。

そうすると、同被告の遺留分額は、右各目録記載の総合計額二億七二一一万一五七七円の一八分の一である一五一一万七三一〇円となる。

(二) 同被告は、本件遺言による本件(二)の土地の約二五坪分七四三万六七〇〇円(一平方メートル当たり九万円×八二・六四平方メートル)のほか未分割の遺産(別紙相続財産目録36ないし64の各不動産。評価額合計八二三万四七四五円)に対して法定相続分九分の一の割合による権利(九一万四九七一円)を有するから、同被告の具体的相続分を評価すると、その額は、合計八三五万一六七一円となる。

(三) したがって、同被告の遺留分侵害額は、六七六万五六三九円である。

(四) 同被告は、昭和五四年一一月一六日の本件口頭弁論期日において、原告一郎、同三郎及び花子に対し(右時点においては、原告一郎は取下げ前の旧請求の原告であり、花子も生存中で原告として訴訟追行中であった。)、右侵害額の限度で右原告ら及び花子に対する遺贈を減殺する旨の意思表示をした。

(被告丙川)

6  被告丙川は、昭和五一年九月二一日、原告三郎及び花子の代理人である被告夏子から、本件(八)の土地を代金六〇〇万円で買い受け、請求原因5の(四)のとおりの登記を経由した。

仮に、右代理権が存在しなかつたとしても、民法一一〇条の表見代理が成立する。すなわち、

(一) 太郎は、生前、本件(八)の土地を含む貸地及び貸家の管理一切を被告夏子に委ねていたが、昭和三九年六月四日太郎死亡後も、原告ら及び花子は、従前どおり、同被告に右管理(賃料の請求、収受、値上げ交渉や弁済供託された家賃の還付請求についての代理権)を委ねていた。また、原告ら及び花子は、別紙相続財産目録35の土地を昭和四二年二月九日丁原冬夫に売却するについても、別紙追加相続財産目録1の建物を昭和五一年七月一二日戊田冬子に売却するについても、被告夏子にその代理権を授与した。

(二) 被告丙川は、同夏子から本件(八)の土地を買い受ける際、同被告にその代理権があると信じていたし、そう信ずるにつき正当な理由があった。

7  原告らは、丁原冬夫や戊田冬子に対する前記売却については問題にしないで、被告丙川との間の本件(八)の土地の売買についてのみ、その代金の使途等について合意ができないため、太郎の相続とは無関係な同被告を相手に本件請求をしている。よって、同被告に対する本訴請求は、信義則に反し、権利の濫用である。

四  抗弁に対する認否

1  抗弁1ないし3の事実は否認する。

2  同4の主張は争う。

3  同5の主張は争う。ただし、(一)の事実中、別紙相続財産目録及び追加相続財産目録記載の各不動産の評価額を除くその余の部分及び(四)の事実は認める。

4  同6の事実中、被告夏子が同丙川に対し本件(八)の土地を売り渡したこと、本件(八)の土地につき請求原因6の(四)のとおりの登記が経由されたことは認め、その余の事実は否認する。

5  同7の主張は争う。

五  再抗弁

(遺留分減殺請求の抗弁に対し)

被告夏子は、昭和五二年一〇月一八日、大阪家庭裁判所における本件遺言書の検認手続の際、本件遺言書の存在を知り、減殺すべき遺贈の存在を知った。したがって、その後一年の経過により、同被告の遺留分減殺請求権は時効により消滅した。また、太郎の相続開始時である昭和三九年六月四日から一〇年の経過によっても右遺留分減殺請求権は時効により消滅した。よって、本訴において、右時効を援用する。

六  再抗弁に対する認否及び主張

争う。原告らが消滅時効を援用するのは、援用権の濫用である。

第三証拠《省略》

理由

一  請求原因1の事実中、太郎が本件(八)の土地を所有していたが昭和三九年六月四日死亡したこと及び同2、4の各事実は、当事者間に争いがなく、同1のその余の事実及び同6(一)の事実は、被告夏子、同春夫との関係では争いがなく、被告丙川との関係では、《証拠省略》によりこれを認めることができる。

二  そこで、本件遺言の効力について検討する。

1  前記一の争いがない事実及び認定事実と、《証拠省略》を総合すると、次のとおり認められる。

(一)  太郎は、昭和三九年四月ころ、file_2.jpg臓癌のため自宅で病床に伏していたが、同月六日、花子の面前で、別紙「遺言證」のとおりの本件遺言書を、その全文、日付、氏名を自書し、これに押印して作成し、花子にその内容を読み聞かせたうえ、これを封筒に入れて封をし、花子にその保管を委ねた。

(二)  花子は、本件遺言書を自宅のタンスの中に保管し、太郎が死亡した同年六月四日以後も、引き続き同様に保管していたが、昭和五一年六月ころ、本件(一)ないし(三)の各土地につき、請求原因6の(一)のとおり、すでに被告夏子名義の所有権移転登記が経由されていることが判明したので、同被告、原告一郎、同三郎に本件遺言書の存在を明らかにした。

(三)  その後、本件(一)ないし(三)の各土地の所有権の帰属について、同被告と花子らの話し合いが行われたが、結局話し合いがつかず、原告秋子が千田専治郎弁護士に依頼し、昭和五二年一〇月一八日、大阪家庭裁判所で本件遺言書の検認手続がとられた。

以上のとおり認められ、これに反する被告夏子本人尋問(第一回)の結果(一部)は、前掲各証拠(特に鑑定結果)に照らして到底採用することができず、他に右認定を覆すに足りる証拠はない(なお、被告夏子本人の供述中、太郎は、本件遺言書のほかに、別の遺言書一通を作成しており、右遺言書には、「乙野園甲野一郎、甲川通り甲野夏子、残り花子」と記載されているとの部分もにわかに採用することはできない。)。

2  そうすると、本件遺言は、太郎の自筆証書による遺言として、その効力を有するといわなければならない。

三  次に、本件遺言が原告ら主張のように、遺贈の趣旨であり、これによって、花子、原告二郎及び同三郎が、本件(一)ないし(九)の土地建物について共有持分権又は所有権を取得したか否かについて検討する。

1  本件遺言書の全文は、別紙「遺言證」記載のとおりであり、そのうち不動産の表示が記載自体からは不明確であるが、《証拠省略》によると、本件遺言書の内容は、本件(一)の土地は、花子の「名義にする物なり」と、本件(二)の土地のうちの被告夏子居住建物の敷地部分二五坪は、同被告に「渡すものなり」と、本件(二)の土地のその余の部分と本件(三)(八)の各土地、(四)の建物は、「残り財産」として原告三郎と花子が「相続する物なり」と、本件(五)ないし(七)の各建物は、原告二郎に「渡す物なり」と、本件(九)の建物は花子の「名義にする事」と、また、天草郡《番地省略》の財産は、花子及び原告一郎に「くわん理を申し付くべし」、原告春子、同秋子及び被告夏子はこれに対し「口出しの要なし」とそれぞれ記載されていることが認められ、右認定に反する証拠はない。

2  ところで、被相続人が特定の相続財産を特定の共同相続人に取得させる旨の遺言をした場合には、特別の事情のない限り、これを右特定財産の遺贈とみるべきではなく、その後に相続人間において行われる遺産分割において右特定の財産をその相続人に取得させるべきことを指示する遺産分割方法の指定(民法九〇八条)とみるべきものであり、もし取得させる財産の価額がその相続人の法定相続分を超えるときは、相続分の指定(同法九〇二条)を併せ含む遺産分割方法の指定(なお、共同相続人間で遺産分割協議が成立する場合や調停が成立する場合には、必ずしも右の指定による拘束を受けるものではないから、結局、右指定は、法律上は、家庭裁判所における遺産分割の審判において拘束力を有することになる。)と解するのが相当である。特に、当該遺言が自筆証書によるものであって、しかも、その内容が、相続財産の全部を共同相続人の全員に対して割り付けるものではなく、相続財産の一部について、各相続人がそのうちのどの財産を取得することになるかを決めているにすぎないときは、遺言書の文言自体によって一義的に明確に遺贈であることが明らかでない限り、これを遺産分割方法の指定と解するほかないというべきである。

3  そうであるとすれば、本件遺言は、自筆証書によるものであって、各相続人が取得すべきものとされている財産が太郎の相続財産の一部であることは明らかであり(太郎の相続財産として、本件(一)ないし(九)の土地建物を含む別紙相続財産目録及び追加相続財産目録記載の各不動産が存在することは、当事者間に争いがない。)、しかも、相続財産の他の一部については管理の方法のみが定められているにすぎないのであるから、右1の「名義にする物なり」「渡すものなり」「相続する物なり」「名義にする事」の趣旨は、遺贈ではなく、遺産分割方法の指定と解するのが相当であるといわなければならない。そして、他に、花子、原告二郎及び原告三郎が、原告ら主張のとおりの遺贈を受けたことを認めるに足りる証拠はない。

4  してみると、本件遺言によって、直ちに、本件(一)ないし(九)の土地建物について、その所有権又は共有持分権が原告ら主張のように、花子、原告二郎及び原告三郎に移転、帰属することはないというべきであり(太郎の相続財産について遺産分割の手続が行われたことを認めるに足りる証拠はない。)、この点に関する原告らの主張はすべて理由がない。

四  以上のとおり、花子、原告二郎、同三郎が、原告ら主張のとおりの遺贈を受けたことが認められない以上、これを前提とする原告らの本訴請求は、いずれも、その余の点について判断するまでもなく(なお、原告らは、本訴において、本件(一)ないし(九)の土地建物についての太郎の共同相続人としての花子及び原告らの共有持分権に基づく請求をするものではないことを明示している。)、理由がない。そこで、原告らの本訴請求は、すべて理由がないものとしてこれを棄却することとし、訴訟費用の負担について民訴法八九条、九三条本文を適用して、主文のとおり判決する(なお、花子は、原告として本件訴えを提起したが、訴訟係属中の昭和六〇年六月一〇日死亡し、その地位を、請求原因4のとおり、原告ら五名及び被告夏子が相続したから、本訴訟のうち花子と同被告との関係部分は、同日をもって終了したことになる。)。

(裁判長裁判官 島田禮介 主任裁判官 八木良一 裁判官 髙橋文清)

<以下省略>

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